小川一水著「天冥の標II 救世群」、読了です。
突拍子もない展開で物語が進み、そして「ええ?こんな終わり方でいいの?」と裏切られたような結末を迎えた前作に比べると、多少は現実的なお話しになっているようです。
たぶん、前作のような世界がいかにして創られたかの経緯を説明する物語が、これ以降続くと思われます。しかし、その物語が説明的にならず、前作ほどではないにしても、かなりなエンターテイメント性を持っていて、僕はこの作品も一気に読み終えてしまいました。
そして、「匂い」です。
「メニー・メニー・シープ」のレビューにも書きましたが、エランカがラゴスに欲情していく段階として、匂いの存在は大きかったと思うのです。「救世群」では、その「匂い」がクローズアップされ、冥王斑という感染症の重要なキーワードになっています。
そして「断章二」で描かれる奇妙な物語。ウィルスとして保存されていた被展開体(知性体?のような存在)が、羊の遺伝子として取り込まれます。
これ、上田早夕里著「華竜の宮」のレビューにも書いたポール・ディ・フィリボ著の短編「系統発生」を思い出します。ただし、一水の場合は、そのまま、ウィルスとして保存された存在としてなんらかの知性を登場させています。
このウィルス化して保存されていた知性が、「メニー・メニー・シープ」に登場した「ダダー」のようです。そして、「ダダー」は、フィオドールの開発したソフトウェアと一体化し、コンピュータの中で人格を得ます。この「ダダー」が物語の重要な存在であることは「メニー・メニー・シープ」での登場の仕方からも推測できます。
今後の展開を予想です。
冥王斑のウィルス保持者が、今後どんどん増えていき、ウィルス保持者同士で交配をくり返し、世代を重ねることによって、別種の生物へ進化していくのではないか?
精細胞や卵細胞の遺伝子が、ウィルスによって変異するわけです。その変異の結果が、「メニー・メニー・シープ」に登場したイサリたちなのではないかと思うのです。
しかし、これにアクリラたちの祖先がどう関わっていくのかは、今後の作品を読まなければまったく予想できません。
ちらっと三巻の「アウレーリア一統」を読んでみたところ、木星での話やカヨがナビゲーターをやっている場面などが描かれているようで、これはもしかして本当に「Slowlife in Starship」の世界観を引きずっているのかも知れません。いや、もしかすると、このカヨは、「Slowlife in Starship」のミヨと同一のロボットなのかも知れない!
アクリラたちの祖先の活躍、今後の展開が楽しみです。彼らは、どう「冥王斑」や「ダダー」と関わっていくのでしょうか。「ダダー」は、どこから来たのでしょうか。
楽しみですね。
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