2012年1月31日火曜日

いろいろ楽しめた!

大森望・日下三蔵・山田正紀編「原色の想像力」、読了です。
 第一回創元SF短編賞の最終選考に残った九編と受賞作作家による書き下ろしを集めたアンソロジーです。

まず、高山羽根子著「うどん キツネつきの」から。
 得体の知れない生き物を拾った姉妹が、その生き物とともに歳月を重ね、大人になっていくという物語。拾った生き物の正体は、ずっと明かされないままストーリーが進んでいくので、ちょっとモヤモヤが残りました。w
 なんとなくだけど、テリー・ビッスンばりのほら話のようでもあり、楽しめました。
 ただ、ラストで和江が何をどう思ったのかは不明。わかる人にはわかるのでしょうか?僕にはさっぱりでした。(^_^;)

 端江田仗著「猫のチュトラリー」
 ミャウリンガルの発展型をインストールされたケアノイド(介護用のアンドロイド)が、猫と人を間違うお話し。ほのぼの系のSFのようでもあり、他者というものについて考えさせられるようでもあり、なかなか楽しめました。

 永山驢馬著「時計じかけの天使」
 この作者は小説慣れしていますね。主題がしっかりしていて、何を書けばいいのかわかっているという印象です。うまいですね。

 笛地静恵著「人魚の海」
 隕石の落下が生態系を変えてしまった世界を描いている──、ように思えます。その世界があまりに奇異で匂うように官能的。いい意味でぶっ飛んでいます。
 多少読みづらい文章だと感じたのですが、その色濃い特徴が、この作品の世界観にマッチしていて、独特の雰囲気を作り出しています。いろいろ刺激される作品でした。

 おおむらしんいち著「かな式 まちかど」
 ええ?これもSFなんですか?w
 でも、笑いました。楽しい作品です。こういうのも、アリかなぁ。(^_^;)

 亘星恵風著「ママはユビキタス」
 これもいいですね。ここまで壮大な話になのに、親子の話になっていて、その濃密な関係が主人公の孤独感を浮き立たせているようにも思えます。

 山下敬著「土の塵」
 ループものの時間SFですね。これはSFの古典だ。うまいですね。

 宮内悠介著「盤上の夜」
 これはおもしろかった!手足を失った女性が、囲碁の局面に自分の四肢の延長を知覚してしまうというお話し。囲碁がわからない僕にも十分楽しめました。他作品があれば、それもちょっと読んでみたいですね。

 坂永雄一著「さえずりの宇宙」
 う~ん、これは、読者に負担を強いる小説だなぁ。なんとなく言いたいことはわかるけど、もうすこし説明的な部分も欲しいかも。疲れました。w

 松崎有理著「ぼくの手のなかでしずかに」
 数学者の話だったので、そっちに重きが置かれているのかと思えば、長生きするか繁殖するか、というテーマだった。サーチュイン遺伝子みたいなものを想像しながら読んでみましたが、ちょっと肩すかしを食らったようでもあります。

 さて、このアンソロジーには、巻末に第一回創元SF短編賞の最終選考座談会というのが載っていて、個人的にはかなり笑わせていただきました。
 そして、僕も全然知らなかったのですが、巨大化する女性フェチとも言うべきGTSというジャンルがあり、まさに「人魚の海」の著者である笛地静恵さんが、その筋では有名な方だということで、びっくり。そんなフェチがあったのかぁぁっ!
 あと、高山羽根子著「うどん キツネつきの」は誰が読んでも、「わからないもの」なんですね。(いい意味で)(^_^;)
 たしかに、頭の中を引っかき回されるような刺激はありました。三姉妹同時にペットの名前を「うどん」と答えるシーンなど、吹き出してしまいましたので。うどんってなんだろうと思いながら読み進めたので、名前が「うどん」だったのかぁぁっ!みたいな。
 こういうの、面白いですね。最終選考に残らなかった他の作品も読んでみたい気がします。

2012年1月16日月曜日

約束の方舟

瀬尾つかさ著「約束の方舟」、読了です。
 ハヤカワ文庫さん、ここ最近、意識的にラノベ作家さんを起用されているようで、その流れに僕もすこし付き合ってみたいと思います。
 瀬尾つかさのラノベは、一冊も読んだことがない(すいませんw)ので、ラノベとの比較はできないのですが、ずいぶん可愛い小説だなぁ、というのが感想です。

 あらすじ。
 主人公シンゴは、百年にわたって旅を続ける多世代恒星間航宙船タカマガハラIIで暮らす少年。航宙船の船内では、人々はベガーと呼ばれるゼリー状の生物と共存している。旅は終わりに近づいていたが、その昔ベガーと戦争した大人と、ベガーを友だちのように感じている子供のあいだで、小さいながらも意識のズレが生じ始めていた。

 たぶん、ハードSF志向の作家が書くと、宇宙船の構造や減速のタイミングにこだわるのだろうけれど、そういうものは異星人のテクノロジーということですべて丸投げしてしまって、そこで暮らす少年や少女の描写に力を入れる、というのも、SFのひとつのカタチなのかもしれません。
 子供と大人の価値観が大きく食い違っている社会というのは、たとえば、バブルを体験した大人と、就職難の時代に生きる若者が共存する現代のようで、その食違いのようなものがとても面白かったですね。
 個人的な不満を言わせてもらえれば、テル=ウィルトトには、テル成分をずっと維持させて欲しかった!そして、マザー・ベガーの記憶が戻ると同時に、テルは完全なヒトへと変身可能になる!ってやって欲しかったんですよねぇ。そして、完全無欠のロリキャラ完成!!
 って、それじゃラノベか?(^_^;)

2012年1月9日月曜日

今年の一冊目

 瑞智士記「展翅少女人形館」、読了です。
 ヒトの子宮で育まれる命が、ヒトであることを辞め、球体関節を持った人形になってしまう。そんな未来を描いています。
 主人公たちは、そんな世界にあって、めずらしくヒトとして生まれてきた少女たちであり、その少女たちが織りなす人間関係やフェティシズムを、退廃的に、そして官能的に描いています。
 また、物語の舞台を、修道院という閉鎖された空間にすることで、ヒトの関係性をより濃密なものとし、歪で奇怪な方向へ推し進めることに成功していると言えます。
 ミラーナのバレエのシーンなど、僕には到底書けそうもない描写力なので、ちょっとうらやましいですね。(^_^;)
 これ、読んでいて疑問に思ったのが、生まれてくる人形は、みんな少女の形をした人形なのだろうか?ってこと。
 現に、男の子の姿をしたビスクドールはあって、もし、「展翅少女人形館」のフローリカのような、人形に釘を刺すことで歓びを感じるような趣味の女の子の場合、対象となる人形は女の子タイプと男の子タイプ、どっちがいいんだろうか?などと考えてしまったわけです。
 でも、「少女人形館」だから、男の子タイプは修道院にはないのかもしれませんね。

2012年1月2日月曜日

カールは二度、ウナギで悪戯したのか?

 あけまして、おめでとうございます。
 今年は、いい年でありますように。

 新潮文庫村岡花子訳、モンゴメリ著「赤毛のアン」シリーズ全一〇巻、読了です。
 昨年、名作アニメ「赤毛のアン」を観て以来、ずっとこのシリーズを読んできたわけなのですが、なんとか、昨年内に読み切ることができました。
 「アンの娘リラ」の巻末にある村岡の解説によると、本来、「赤毛のアン・シリーズ」というのは、八冊目の「アンをめぐる人々」をもって終了するらしく、たしかに、九冊目の「虹の谷のアン」では、メレディス牧師の子供たちが主人公だし、一〇冊目の「アンの娘リラ」でも、アンは脇役に徹しています。※1
 人は歳をとると悲しみも増えるもので、その悲しみはアンの身にも降りかかります。育ての親であるマリラを亡くし、世界大戦は次男のウォルターも奪います。
 アンの人生をハッピーエンドとして完結させたいのであれば、七冊目の炉辺荘(イングルサイド)のアン」で読み終えてもいいのではないか!
 ただ、あるエピソードから、モンゴメリは、炉辺荘のアンを書いた時点で、その後の構想をすでに持っていたことがわかります。
 「炉辺荘のアン」で生まれた長男のジェムが、子供時代、犬に恵まれなかった、というエピソードがあったと思います。
 そのエピソードでモンゴメリは、将来的にジェムが忠実な犬を飼い、その犬の献身的な愛情はグレン村の歴史に残るほどだったと書いている通り、「炉辺荘のアン」を書いた時点で、モンゴメリはすでに、世界対戦中の話を書くことを決めていたのですね。※2
 つまり、増えていく悲しみをアンが背負う、そういった辛い話も含めて、このシリーズなのかなぁ、と思うわけです。「赤毛のアン」のラストも、そんなにハッピーエンドじゃなかったですし。
 また、シリーズ最初の「赤毛のアン」が出版されたのが1908年。すでに三〇年以上経ってから書かれているシリーズであり、モンゴメリ自身の心の変化も反映されているのかもしれません。
 このシリーズ、登場人物の数がものすごく多く、「良く書いたなぁ」と思うのですが、メレディス牧師の次男カールについて、ちょっと気付いた箇所が……。
 「虹の谷のアン」で、鰻をカー夫人の馬車に投げ入れるといった悪戯をしたカール。そのカールを、父親のジョン・メレディスは、鞭で打とうと決意するのですが、結局、カールの目が死んだ妻と似ていると気付いた牧師は、鞭で打つことはできませんでした。※3
 ところが、「アンの娘リラ」では、メレディス牧師はウナギで悪戯したカールのことを一度だけ打った、とあります。※4
 え?カールは、あの後で、またやらかしたのか?
 いや待て。
 カールの目が死んだ妻の目に似ていること気付いた、とあるので、やはり「虹の谷のアン」のときの、あのエピソードを言っているのだろと思われます。
 僕の想像では、牧師が、自分の息子を鞭で打とうと決意したこと自体に罪の意識を持ち、記憶の中で、息子を鞭で打ったことにしてしまったのではないか?と思うのですよね。
 つまり、牧師の中の罪悪感が、記憶を書き換えてしまったのです。
 うん。
 そういうことにしよう!(^_^;)

1 wikiによると、この分類方法にも何種類かあるらしく、モンゴメリ自身は「アンをめぐる人々」をシリーズに入れたくなかったらしい。
2 「炉辺荘のアン」が書かれたのが1939年。最初の世界大戦が1914年から1918年。つまり、モンゴメリは戦後になって、「炉辺荘のアン」という戦前のエピソードを書いている。
3 「虹の谷のアン」新潮文庫429ページ参照。
4 「アンの娘リラ」新潮文庫297ページ参照。

2011年12月27日火曜日

2011年 今年の三……、五冊

 年末です。
 そろそろ今年の三冊を選んでみたいと思います。
 まずは、今年読んだ本のリストです。

1.伊藤計劃著「ハーモニー」
2.今野緒雪著「マリア様がみてる ステップ」
3.桜庭一樹著「GOSICK
4.マイクル・フリン著「異星人の郷 上」
5.マイクル・フリン著「異星人の郷 下」
6.伊藤計劃著「虐殺器官」
7.田中久仁彦「一撃殺虫!!ホイホイさん」
8.川口淳一郎著「はやぶさ、そうまでして君は 生みの親がはじめて明かすプロジェクト秘話」
9.桜庭一樹著「GOSICK II その罪は名もなき」
10.桜庭一樹著「GOSICK III 青い薔薇の下で」
11.桜庭一樹著「GOSICKs」
12.桜庭一樹著「GOSICKs II 夏から遠ざかる列車」
13.桜庭一樹著「GOSICK IV 愚者を代弁せよ」
14.桜庭一樹著「GOSICK V ベルゼブブの頭蓋」
15.桜庭一樹著「GOSICK VI 仮面舞踏会の夜」
16.桜庭一樹著「GOSICKs III 秋の花の思い出」
17.野尻抱介著「クレギオン1 ヴェイスの盲点」 再読
18.野尻抱介著「クレギオン2 フェイダーリンクの鯨」 再読
19.野尻抱介著「クレギオン3 アンクスの海賊」 再読
20.野尻抱介著「クレギオン4 サリバン家のお引っ越し」 再読
21.野尻抱介著「クレギオン5 タリファの子守歌」 再読
22.野尻抱介著「クレギオン6 アフナスの貴石」 再読
23.野尻抱介著「クレギオン7 ベクフットの虜」 再読
24.都筑卓司著「不確定性原理 運命への挑戦」 再読
25.ヤマグチノボル著「ゼロの使い魔 18 滅亡の精霊石」 再読
26.ヤマグチノボル著「ゼロの使い魔 19 始祖の円鏡」 再読
27.ヤマグチノボル著「ゼロの使い魔 20 古深淵の聖地」
28.桜庭一樹著「GOSICK VII 薔薇色の人生」
29.朝倉怜士著「オーディオの作法」
30.アダム=トロイ・カストロ著「シリンダー世界111
31.鯨統一郎著「邪馬台国はどこですか?」
32.桜庭一樹著「推定少女」
33.佐藤 勝彦 (監修)「量子論がよくわかる本」 再読
34.桜庭一樹著「私の男」
35.小川一水著「青い星まで飛んでいけ」
36.上田早夕里著「華竜の宮」
37.浅田次郎著「地下鉄に乗って」
38.上田早夕里著「魚舟・獣舟」
39.小川一水著「天冥の標I メニー・メニー・シープ 上」
40.小川一水著「天冥の標I メニー・メニー・シープ 下」
41.小川一水著「天冥の標II 救世群」
42.小川一水著「天冥の標III アウレーリア一統」
43.桜庭一樹著「GOSICKs IV 冬のサクリファイス」
44.ルーシー・モード・モンゴメリ著「赤毛のアン」
45.小川一水著「天冥の標IV 機械じかけの子息たち」
46.ルーシー・モード・モンゴメリ著「アンの青春 赤毛のアン・シリーズ2」
47.ルーシー・モード・モンゴメリ著「アンの愛情 赤毛のアン・シリーズ3」
48.パオロ・バチガルピ著「ねじまき少女 上」
49.パオロ・バチガルピ著「ねじまき少女 下」
50.小川一水著「風の邦 星の渚 レーズスフェント興亡記 上」
51.小川一水著「風の邦 星の渚 レーズスフェント興亡記 下」
52.黒崎政夫著「となりのアンドロイド」
53.中村融編「時の娘」
54.山本弘著「アイの物語」
55.小川一水著「導きの星I 目覚めの大地」
56.小川一水著「導きの星II 争いの地平」
57.小川一水著「導きの星III 災いの空」
58.小川一水著「導きの星IV 出会いの銀河」
59.川原由美子原作「観用少女 プランツ・ドール 完全版 一巻」
60.川原由美子原作「観用少女 プランツ・ドール 完全版 二巻」
61.鬼頭莫宏原作「ヴァンデミエールの翼 一巻」
62.鬼頭莫宏原作「ヴァンデミエールの翼 二巻」
63.川原由美子原作「観用少女 プランツ・ドール 完全版 三巻」
64.桜庭一樹著「GOSICK VIII 上 神々の黄昏」
65.桜庭一樹著「GOSICK VIII 下 神々の黄昏」
66.長谷敏司著「あなたのための物語」
67.山本弘著「地球移動作戦 上」
68.山本弘著「地球移動作戦 下」
69.野尻抱介著「ロケットガール4 魔法使いとランデブー」
70.山本弘著「詩羽のいる街」
71.緒形屋はるか原作「ぽてまよ 5
72.須藤みか著「エンブリオロジスト 受精卵を育む人たち」
73.コニー・ウィルス著「犬は勘定に入れません あるいはヴィクトリア朝花瓶の謎」
74.菅浩江著「そばかすのフィギュア」
75.菅浩江著「プリズムの瞳」
76.河野哲也著「暴走する脳科学 哲学・倫理学からの批判的検討」
77.大野和基著「代理出産 生殖ビジネスと命の尊厳」
78.ルーシー・モード・モンゴメリ著「アンの友達 赤毛のアン・シリーズ4」
79.ルーシー・モード・モンゴメリ著「アンの幸福 赤毛のアン・シリーズ5」
80.香月真理子著「欲望のゆくえ 子供を性の対象とする人たち」
81.ルーシー・モード・モンゴメリ著「アンの夢の家 赤毛のアン・シリーズ6」
82.ルーシー・モード・モンゴメリ著「炉辺荘のアン 赤毛のアン・シリーズ7」
83.グレッグ・イーガン著「プランクダイブ」
84.デイヴィッド・プロッツ著「ノーベル賞受賞者の精子バンク 天才の遺伝子は天才を生んだか」
85.あずまきよひこ原作「よつばと!11巻」
86.百田尚樹著「風の中のマリア」
87.菅浩江著「永遠の森 博物館惑星」
88.栗山緑著「おジャ魔女どれみ16
89.小川一水著「天冥の標 羊と猿と百掬の銀河」
90.菅浩江著「五人姉妹」
91.菅浩江著「ゆらぎの森のシエラ」
92.小川幸辰原作「エンブリヲ 一巻」
93.小川幸辰原作「エンブリヲ 二巻」
94.小川幸辰原作「エンブリヲ 三巻」
95.ルーシー・モード・モンゴメリ著「アンをめぐる人々 赤毛のアン・シリーズ8」

 以上、95冊です。
 SF42冊、ラノベ18冊、コミック10冊、「赤毛のアン・シリーズ」が9冊(現在読みかけの本も入れると10冊)、などが主な内訳です。
 今年もかなり乱読でして、前半は、野尻のクレギオンシリーズなどを再読しています。昨年までSFをあまり読んでいませんでしたので、その反動が今年来た、っていう感じですね。一年中、堪能させていただきました。
 とくに、伊藤計劃の二冊は、もう、本当にすごい!のひとこと。そして、溜めた挙げ句に一気に読んだ小川一水の「天冥の標シリーズ」は、もうSF好きで良かった!と思える内容。そして、菅浩江のすばらしい短編の数々。今年の読書は充実していました。
 では、今年の三冊、発表します。
1.伊藤計劃著「ハーモニー」
2.山本弘著「アイの物語」
3.小川一水著「天冥の標IV 機械じかけの子息たち」
 こうなりました。
 しかーっし!ここでどうしても外せない作品が二冊あって、それを特別枠ということで、
4.菅浩江著「プリズムの瞳」
5.川原由美子原作「観用少女 プランツ・ドール」
 これらも入れたい!
 全然「今年の三冊」じゃないですね。(^_^;)
 でも、そんな厳格に選ばなくてもいいんです。なぜなら、ここは僕の日記帳なので。(^_^;)
 「ハーモニー」と「アイの物語」は文句なく今年の三冊です。ちなみに、伊藤計劃の長編は「虐殺器官」より、僕は「ハーモニー」の方がよく書けていると思うのです。あの読後感は、なんとも言えませんね。
 「天冥の標IV 機械じかけの子息たち」はかなり迷いました。しかし、エロ小説(し、失礼!w)にも関わらず、なぜこうも読者に問いかけてくるのか?この力量!さすが一水です。たんなるエロではなく、快楽を求めることはどうして軽蔑されるのか?なぜ、それはそれほどまでに恥ずべきものなのか、といった僕たちの感情の根源のようなものまで考えさせられる作品でした。
 「プリズムの瞳」は、アンドロイドを描きつつ、その実、人間を描いているといううまさ。今年はじめて読んだ作家なのですが、かなりはまりました。
 そして、最後のコミック「プランツ・ドール」は、少女と女の境界のようなものを描いていて、「あ~あ、こいつ女になっちゃったよ」みたいな、ロリコンとしては残念な瞬間を描いていて、面白かったですね。
 これら以外では、生殖医療に関するノンフィクションがなかなか考えさせられるものばかりで、読み応えがありました。不妊というのは病気なのか?子供が欲しいと思う気持ちは欲望なのか?
 須藤みか著「エンブリオロジスト 受精卵を育む人たち」、大野和基著「代理出産 生殖ビジネスと命の尊厳」、デイヴィッド・プロッツ著「ノーベル賞受賞者の精子バンク 天才の遺伝子は天才を生んだか」など。気になった方は、ぜひお読みください。
 「赤毛のアン・シリーズ」は、全巻読み終え次第、感想など書きたいと思います。
 今年の後半、とくにその傾向が顕著なのですが、じつは「今年の五冊w」のうち2~5までがすべてアンドロイドのお話しだということで、無意識のうちに、僕はそう言ったテーマの作品を選んでいたようです。
 菅や山本の作品には、アンドロイドを他者と捉え、そのアンドロイドに何を見いだすかは、人間の側の問題であり、そこに見いだしたものが、その人間性を浮き彫りにしていく、といったような特徴があります。あるいは、川原のコミックでさえ、そういう表現がされています。小川の作品では、アンドロイドの行動自体が、ヒトとは何かを問いかけているようです。それに、ねじまき少女に対するバチガルピのスタンスと、小川の<恋人たち(ラヴァーズ)>に対するスタンスの違いといった比較も楽しかったです。(どちらも性玩具としてのアンドロイドである)
 この他にも、SFマガジンに掲載された短編なども読んでいて、その感想なども書きたかったのですが、体力が……orz
 来年、またがんばります。

2011年12月19日月曜日

おがわ甘藍ではない小川作品

 小川幸辰原作「エンブリヲ」全三巻、読了です。
 小川幸辰というと、現在おがわ甘藍名義での仕事が多く、いまでは一般誌にマンガを書いているようですが、一時期は成人マンガばかりでした。
 その成人向けのマンガの内容というのが、ことごとく年端のいかない少女を対象とした作品でした。いわゆるロリコンものですね。
 僕は、おがわ甘藍名義での絵がきらいではなく、成人マンガもストーリー性があって好きでしたので、小川幸辰名義だったころの作品にも興味を持って、今回読んでみました。
 生物学ホラーということで、蠢く虫や肉体を虫に食われていく描写など、グロテスクな描写が多く、独特の雰囲気を持った作品に仕上がっています。
 そのグロテスクさと、虫の卵を宿し、虫を慈しんでしまう主人公布良が清楚な少女であるという対比は、どこかで見た対比だと思い、考えてみると、「風の谷のナウシカ」なんですよね、これって。腐海の森の猛毒の植物をこっそり育て、蟲に愛情を注ぐナウシカは、まさに布良です。しかも、布良が出産した新種の虫が、沼の水質を浄化しているなんて話は、それこそナウシカのような気がします。
 最終巻である三巻で、小川は、現在の絵柄で後日談のようなエピソードを書き加えています。小川幸辰の絵柄が好きな人にとって、あの加えられた二ページで、作品全体をぶち壊してしまっているようにかんじるかもしれません。ところが、僕はいま現在のおがわ甘藍名義の絵が大好きですので、この二ページによって救われた気がします。
 僕の場合、できることならば、おがわ甘藍名義でこんな作品描いてほしいですね。ファンタジーありの、微エロありの、そんなホラー。どうでしょう?

2011年12月10日土曜日

五人姉妹

菅浩江著「五人姉妹」、読了です。
 表題作「五人姉妹」は、五人のクローンが織りなす多様な生き様が、遺伝子への幻想を打ち砕くかのような短編です。はたして、同じ遺伝子でここまで多様な性格が作られてしまうのかは、そういった実験結果が存在しない(というか、存在してはいけない!)ため、わかりません。しかし、それこそSF的なイマジネーションで、では、自分を形成していった要素とは何なのだろうかと考えさせられる、面白い短編です。
 菅は、仮想的な何か(アンドロイドが多い)に自己を投影させ、そこにできあがった幻影のような自己に、本当の自分の姿を見せてしまう天才だと思うのですよね。だから、二本目の短編「ホールド・ミー・タイト」や「夜を駆けるドギー」「賤の小田巻」「子供の領分」などの短編は、仮想的な領域にいるときにこそ真実が見えてくるような、そういった面白さがあります。
 恋愛SF小説として秀逸な「ホールド・ミー・タイト」と「箱の中の猫」。この二作品に見られる細やかな心理描写は、もう、最高ですね。w 参りました。
 「永遠の森 博物館惑星」(批判的なことしか書けそうになかったので、感想を書いていません)の面白さがよくわからなかった僕としては、「お代は見てのお帰り」がやはりよくわからなかったし、「秋祭り」もちょっと批判的な感想があります。
 「秋祭り」って、支倉凍砂著「狼と香辛料」のホロが、村には必要のない神さまになってしまったみたいな、そんなことを言っているのですよね?w
 神さまに幻想が抱ける人って、いいよなぁ。「やさしい神さま」なんて、太古の昔からいらっしゃらないように思う(仮に神さまがいると仮定して)のですが、それって僕のたんなる主観なのでしょうか?

 もう一冊。

 小川一水著「天冥の標V 羊と猿と百掬の銀河」、読了です。
 シリーズも中盤ですね。これまでの四作品が派手で強烈に面白かっただけに、今回はすこし地味で説明くさかったかも?
 そしてやはり、スペオペの古典と言えるスミスの「レンズマン」みたく、ふたつの勢力の代理戦争のような図式になってしまうのでしょうか?(おまえら、自分らで戦争しろよ!みたいな……w)
 これって、小川の「導きの星」のときにも感じた危うさなのですが、下手するとただの薄っぺらなスペオペで終わってしまう可能性もあって……、いや、長編シリーズものにリアルタイムで付き合うと、読んでるこっちもはらはらしてしまいますね。(^_^;)
 っていうか、小川は、こういうのが好きなのかも。
 細かい部分をつまみ出してみれば、興味深い箇所もあるのですが……、う~ん、やっぱり不安だなぁ。(^_^;)
 ひとまず、この作品は次回作に期待しましょう。

 今後の読書予定です。
 SFマガジンを古いものも含めて何冊か買ってしまったので、その中からいくつかつまみ食いします。その後は、「赤毛のアン・シリーズ」の残り三冊を読みます。
 年内はこれくらいが限界だと思うので、それを読み終わり次第、今年の三冊を選びたいと思います。