うえお久光著「紫色のクオリア」、読了です。
ラノベでSFが読みたい、というわけで、好評そうなこの一冊を選びました。
他人がロボットに見えてしまう毬井ゆかりと、ゆかりをなんとか理解しようとしている波濤学、ゆかりの幼なじみの天条七美、一章は彼女たちのゆかりにまつわるお話しです。
これは、なんと言うか……、すごいですね。
他者との相互理解や自己のなかにある感覚的質感、あるいは他者のなかにあると信じている「心」の存在、などの危うさを描いていて、それがSF的な大嘘(w……、僕なりの褒め言葉です)とうまく絡んでいます。一章の「毬井についてのエトセトラ」だけでもお腹いっぱいでした(あとがきによると、この部分が短編として先に発表されたらしい)。
そして次章の「1/1,000,000,000のキス」から突入する量子ワールド。
ゆかりは留学してきたアリスに勧められ、「ジョウント」と呼ばれる組織に入り、転校してしまいます。そして、ゆかりの死。波濤学は、ゆかりを助けるために、多世界解釈的なさまざまなパラレルワールドを試します。
某SFで読んだことのあるような大ネタ小ネタを使いながらもオリジナルのストーリーとアイデアを組み上げていて、「フェルマーの原理」を持ち出しながら、学が都合のいい未来に収束しようと試みる行は鳥肌ものでした。ここから、果てしない分岐がはじまり、ありとあらゆる状態の重ね合わせを体験するんだろうなぁ、と思ったらまさにその通り。その分岐はさらに過去へと広がり、あるいは「神」のようなものにもなりながら、学は必死に毬井を助けようとします。
ラノベだからこその、あの結末であり、エンターテイメントとしても面白く、最後まで楽しめました。SFとしても良作だと思います。
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