百田尚樹著「風の中のマリア」、読了です。
オオスズメバチの一生を、徹底的に擬人化して描いています。しかし、擬人化されていても、彼女らはあくまでもオオスズメバチです。主人公のワーカー、マリアは、自分たちの妹のために、毎日狩りに出かけ、縄張り争いをして、せっせと日々働きます。
どうしてわたしたちは子供を産めないのか、と悩み、何のために生きるのか、と哲学者のように考えるオオスズメバチ。そして、いきなり染色体やゲノムの話を始め、ハチやアリなどの社会性昆虫に見られる半倍数性の性決定について、オオスズメバチが解説(!)を始めます。さらに、その半倍数性による遺伝子の分配確率から、ハミルトンの包括適応度にまで話が進みます。
たぶん、オオスズメバチの世界にも、ダーウィンやメンデル、クリックやワトソンのようなハチがいたのでしょう。それに、たぶん、ハミルトンやドーキンスも……。(^_^;)
オオスズメバチのワーカーたちは、血縁度の計算をしながら、妹たちを育て、女王バチの世話をし、身を呈して巣を守っている──、わけではないので、オオスズメバチ自身に、この包括適応度の解説をさせるのはどうかなぁ?と思ったのですが、女王バチがオスを産む場合と、ワーカーがオスを産む場合は、ワーカーから見てどちらが包括適応度が有利になるかなんて、解説がなければ普通わかりませんよね。だから、わざわざオオスズメバチに解説させたのでしょう。
ただ、「女王バチ」というネーミングにも、人間のバイアスがかかっていて、はたして女王バチは本当に女王のようにその巣の中に君臨しているのかは、大きな謎です。女王は、ワーカーたちをフェロモンで支配しているかもしれませんが、ワーカーによって彼女たちの姉妹を強制的に生み続けさせられている、とも言えるように思います。(女王─ワーカー間コンフリクト)女王バチの最後は、それを物語っています。ワーカーは、女王にオスを産ますよりは、自分たちで産もうとしたくらいですからね。
性決定メカニズムが半倍数性の場合、女王バチやワーカー、オスとの関係が複雑でわかりにくいものになります。この本は、血縁度の解説を交えつつ、彼らの関係をわかりやすく解説していて、社会性昆虫の理解に役立つのではないかと思います。
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