上田早夕里著「火星ダーク・バラード」読了です。
偶然にも、チャイナ・ミエヴィル著「都市と都市」に引き続き、警察小説を読んでしまいました。そして、エンターテイメントとしてこの作品はすごく面白かったです。僕は上田の「華竜の宮」を最初に読んで、すこし取っつきにくい作家だと勝手に想像してしまっていたのですが、他作品はこんなにも面白いのですね。
僕にとってこれは「戦う美少女」のジャンルに入れるべき作品です。薄幸の美少女に同情する中年男と、その男に恋してしまう少女。中年男が抱いてしまうファンタジーをそのまま小説にしてしまったような、かゆいところに手が届いている作品と言えます。(^_^;)
ただ、すこし疑問点も。
SF的なガジェットとしては、例えば火星で発見された生物のDNAなどが登場します。そのDNAを使って、アデリーンのような能力を持った子供が誕生するわけです。地球以外の何らかの要素が、ヒトをヒト以上の能力に改変してしまうといった設定は、なんとなく説得力がありそうですが、結局のところ、このお話しでは遺伝子の配列をすべて書き上げてしまうテクノロジーのある世界になっているため、火星由来の遺伝子は必要ないような気もします。
人間の価値観のなかでの「進」化は、通常自然界が選択するような変化の取捨選択とは違って、恣意的な変化を選択してしまいがちです。人間の作り出した倫理観や理想論に沿った変化だけを、「進」化として認めたがる傾向にあるように思われます。実際には、人殺しを好むように変化することも、人殺しを好まない方向に変化することも、それが遺伝子型のなかに変異を認められたならば、どちらかが倫理的に間違っていても、両方とも進化なのですよね。
ノーベル賞受賞者の精子を集め続けたあの人や、優秀などっかの民族の血だけを残そうとした誰かさんみたいに、グレアムの野望も潰えてしまうのかなぁ、などと、いろいろと想像させられた作品でした。
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