小川一水著「青い星まで飛んでいけ」を読んでいます。その中の短編「都市彗星のサエ」と「グラスハートが割れないように」を読了です。
「都市彗星のサエ」は、彗星に作られた都市で暮らす少年少女の物語。
そして、「グラスハートが割れないように」は、オカルトにのめり込もうとする少女を、どうすれば救えるか、と言ったお話。こちらが面白かったので、この短編に関連した話題を少し書いてみたいと思います。
SF作家の山本弘などは、自身のブログで、福島原発の事故に関するニュースを取り上げ、トラック運転手がいわき市内に入ることを恐れているということは、ラジウム温泉に入ることが恐いと言っていることと同じだ、と述べ、『科学的にありえないことを信じているのだから、これは「オカルト」と言うべきである。』と断言しています。また、こういった無知や風評による被害を、許せない、とも述べています。僕も、この意見にある程度賛成です。ただ……。
このような、合理的ではない思考に対する威圧的な態度が、彼らに対して有効かどうかは別問題です。いかに、山本弘が合理的な考え方を述べようと、科学的な知識を示そうと、感情的な暴走を止めることは非常に困難だと思われます。
その点、小川一水の小説は、やさしい、と感じました。この懐柔的な態度が、はたして非合理的な思考をする彼らの説得に有効かどうかわからないという点では、威圧的な接し方とかわりありません。しかし、小児科の医師が子供の患者に接するときのように、感情的に暴走する彼らに対して、やさしさも必要なのではないか、とも思うのです。
でも、どちらの立場をとったところで、所詮、僕たちは非合理的な思考に囲まれて生きていくことにかわりはないんだろうな、とも思っています。
原発事故の風評被害は、すでに工業製品にまで及んでいるというし、巷にはあいかわらず疑似科学がはびこっているし、宗教的な思想の違いで人が殺されているし──。
物理法則の中で生きている僕たちの行動を支配しているのは、物理法則の知識とはかけ離れたものであって、物理法則そのものではない、ということなのだろうと思います。
さて、もうひとつの短編「都市彗星のサエ」も、たのしい作品でした。小川の小説は、読後感がいいですね。
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